2022年春の現実逃避旅行 四日目・五日目 (最終回)

秋学期の授業をこなし、3月頭締め切りの論文をどうにか提出し、卒業後の進路選択も大詰めという、なかなかにストレスフルな日々から現実逃避すべく、一人で関西方面大回りを演じている。せっかくなので旅行記を書いてみる。

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旅行から10日ほど経ってしまったが、残りの旅行記を書き上げないと気持ち悪くていつまでも次の投稿ができないのでエイヤと書くことにする。

萩 → 出雲市

朝早くに宿を出ようと思っていたが、布団が気持ち良すぎて起きられなかったため8時半ほどに出発。前日同様、ひたすらに山陰本線を北上する。相変わらず車両はキハ40。路線の乗りつぶし的な旅をすると車両があまり変わらないのが少々退屈である。

萩:宿の景色。昨日は暗くて分からなかったが景色の良い部屋だった

途中の益田駅で乗り換える。益田駅山陰本線の乗り換えポイントとして知られた駅なので大きい駅だと思っていたが、それほどでも無かった。山陰らしい(というと大変失礼だが)質素な駅舎とどことなく物寂しい空気感が印象的である。駅の外に案内板があったので眺めてみたところ「レジャー」の項にパチンコ屋が一軒だけ掲載されていた。山も海も豊かなんだからもう少し何かこう、もうちょっとあるだろう、と思わないでもない。

益田駅:パチンコが唯一のオアシス

益田駅からも山陰本線であるが、ホームで待っていたらド派手な車両がやってきたので驚いた。調べてみると「石見神楽列車」と言うらしく、島根県JR西日本がコラボしてラッピング列車を走らせているとのことだった。昼間に見たのでまだ良いが、夜にいきなり見させられたらチビるんじゃないかと思う。

益田駅:デコデコの石見神楽列車

益田から出雲市の間も景色がとても良かった。前日ほど晴れ渡ってはいなかったのが残念であるが、少し雲が垂れているくらいが日本海には似合う気もする。

youtu.be

出雲市

お昼過ぎに出雲市駅に到着。昼食を選ぶのが面倒だったので駅舎内にあるラーメン屋に入ったところ、美味くもなく不味くもないのに値段はシッカリという絶妙な具合のハズレチョイスだった。旅先ではちゃんとご飯を選ぼうと猛省。

出雲市に来たからには出雲大社に行かねばということで、一畑電車に乗り込む。車内が少しおしゃれだったが、何かキレ散らかしている地元客がおり普通に危険なので写真は撮れなかった。どんな街にも森羅万象にキレるシヴァ神みたいなオッサンは存在するんだなとしみじみと思った。

出雲市駅:一畑電車(ばたでん)、かわいい

「出雲には出雲大社があるから」くらいのノリで出雲大社に乗り込んだが、後からGoogle先生に聞いたところ出雲大社は「縁結びの神・福の神として名高い」らしい。おかげで初日の倉敷同様、大通りはおしゃれなカップルや女性グループで賑わっており、神社と聞いて想像していたのとは少し違う雰囲気にやや戸惑う。ただ、境内に入ってしまえば出雲大社の荘厳な雰囲気の圧の方が圧倒的に強く、浮ついた雰囲気は消え去った。

出雲大社:広すぎる

出雲大社:広すぎる(2回連続2回目)

大きな本殿にも感心したが、それ以上に、敷地内の文字通り至るところに社(やしろ)があるのがとても面白かった。せっかくの出雲大社だしということで律儀に賽銭をして回ったところ、後半は小銭が尽きてしまったほどである。社の数以上に多かったのは散水栓である。毎年「出雲大社で防災訓練が行われました」というニュースが風物詩的に流れるが、たしかにこの木材だらけの神社に火が付いたら一瞬で燃え広がってしまうだろうなと思う。

出雲大社出雲大社は2礼4拍1礼らしいですね

出雲大社:ニュースで年に1回は見る放水銃

時間があったので、駅とは反対方向に歩いてみる。途中の案内板を見たところ旧大社駅の駅舎が非常に立派だということなので見に行くことにする。しばらく歩くと道の途中に巨大な鳥居が出没した。片足に足場が組まれていてとてもかっこいい。

出雲市:カッケェ

出雲市:工事が終わるとこの撮影ポイントは道のど真ん中になるので真正面から撮れるのは今だけ

さらに倍ほど歩くと、巨大な体育館が見えてきた。大社から伸びるメインストリート沿いとは言え、それほど大きな街でも無いのにこんなに大きな体育館があるんだなぁ、と感心して足を伸ばしてみたところ、なんとそれは僕が目指して歩いてきた旧大社駅だった。工事中だったのだ。さらに不運なことにちょうど僕が到着したタイミングで旧大社駅の隣の家の誰かが倒れたとか何とかで救急車が来てちょっとした騒ぎになっており、国鉄時代の荘厳な駅舎を味わうことは物理的にも精神的にもできなかった。思い返してみれば、実家のメンバーは旅先の目的地で工事に出くわす確率が異様に高いような気がする。先祖が何か良くないことをやらかしているに違いない。

出雲市:巨大な体育館に見える旧大社駅(悲しい)

出雲市デゴイチくんは見れた

時間になったので一畑電車に乗って出雲市駅に帰る。この日の目玉、サンライズ出雲に乗るべく準備を済ませにかかる。が、夕飯用に買おうと思っていた駅弁が全てすでに売り切れていた。かなり時間に余裕を持って出雲市駅に帰ってきたつもりなのに、何ということだ!慌ててGoogleマップ弁当屋を探し、駅から徒歩15分ほどの場所に良さげな店を見つける。いろいろな食べ物が少しずつ入った詰め合わせ弁当を購入し、駅へ戻る。

サンライズ出雲の出発時刻は18時53分であるが、スケジュール構築激下手人間であるところのわたくし須田は、あろうことか、18時半から30分間、オンラインミーティングを入れてしまった。僕が主要メンバーである集まりなので一人抜けるわけにもいかず、サンライズの入線をホームで待ちながらスマホでミーティングに参加する。たぶん今後の人生も一生こんな感じでテンパって過ごすんだろうな、などと思う。

出雲市駅:オンラインミーティングしながら必死で入線を撮影

出雲市 → 東京

無理やりミーティングを終わらせて無事にサンライズ出雲に乗車。初めての寝台列車なこともありテンションがバカみたいに高まる。部屋は「シングル」の一階にした。乗ってみると前評判通り案外広い。二階建て車両なので天井がもっと低いと思っていたが、170cm弱の僕ならぎりぎり立てるくらいには空間があった。乗車してすぐシャワーカードを購入。出発から20分ほど後にはすでに売り切れていたので、やはり真っ先に購入するのが正解らしい。

サンライズ出雲:シングル一階部屋。広い!

部屋に戻り、しばらくの間、布団にスリスリしたり電気を付けたり消したり立ったり座ったり寝っ転がったり窓の外を見たり廊下に出たりスマホを充電したりカップホルダーにカップを入れたり出したりする。15分ほどしてさすがに満足してテンションも落ち着いてきたので購入した弁当を持ってラウンジカーへ行く。

弁当に合わせてビール「しまねっこえーる」と日本酒「豊の秋」を購入していたので、旅が終わる寂しさを紛らわせるためにせっせと飲む。弁当のチョイスは最高で、ビールにも日本酒にも合うおかずばかりだった。ラウンジカーには僕の他に乗り鉄のお兄さん(うっかりオジサンと声を掛けてショックを与えてしまった)と、大学生と大学教員のグループがいた。乗り鉄のお兄さんが非常に気さくで、しばらく歓談する。久々に人間とまともな会話をした気がする(といっても4日ぶりだが)。大学生と大学教員のグループはゼミのようなグループらしく、尋常ではないほどにぎやかだった。お話の上手いお兄さん数名と狂人の匂いがする先生で構成されており、非常に楽しそうだった。彼らとも少し話をする。長居するのも悪いかなと思い、ご飯とお酒が空いたところで退散。

サンライズ出雲:最高の弁当(フタくらい開けて写真を撮れよ)

部屋に戻ってしばらくのんびりしていたところ、お酒を一気に飲みすぎたことと、生活の全てが良く揺れる列車の上であることとのダブルパンチで、車酔いになってしまった。乗車前は何なら一晩中起きていようとも思っていたが、素直に寝ることにする。寝る前にシャワー。ちょうど本州を横断する山がちな区間を走っているタイミングでシャワー室に入ってしまったのでめちゃくちゃに揺れ、苦労した。ただ、揺れ以外は列車に乗っているとは思えないような設備で、いちいち感動した。

部屋に戻って布団に入ったらすぐに寝落ちた。岡山に着いたところはなんとなく記憶にあるが、結局サンライズ瀬戸との連結作業を見に行くことも無く爆睡してしまった。……のだが、なんと我が地元浜松に着いた瞬間に目が覚めた。しかも部屋の目の前に駅名標があるベストポジション。僕は浜松に愛されているのだなぁと謎に感動する。

サンライズ出雲:はままつ(午前3:43)

その後はまたぐっすりと眠り、次に目が覚めたのは横浜付近だった。ベストな目覚め。普段旅客列車は通らない横浜の貨物線を通過しているところをじっくりと味わいながら、東京駅に到着。ホームに並ぶスーツ姿の人たちを横目に下車。優越感が心地よい。

東京駅:ギリギリまだ旅行気分

ここまで来てしまえばあとは消化試合である。秋葉原まで山手線で移動し、つくばエクスプレスつくば駅に戻る。見覚えしかないつくば駅の階段を見て、一気に現実に引き戻された。明日からはまた日常である。

つくば駅:現実世界への階段

おわり