2022年春の現実逃避旅行 二日目

秋学期の授業をこなし、3月頭締め切りの論文をどうにか提出し、卒業後の進路選択も大詰めという、なかなかにストレスフルな日々から現実逃避すべく、一人で関西方面大回りを演じている。せっかくなので旅行記を書いてみる。

一日目はこちら

sudame.hatenablog.com

倉敷 → 下関

この日は基本的に移動日。二日目の目的地である博多を目指してひたすら西へ下っていくという単純作業である。まずは山陽本線の終着駅である下関を目指す。

朝5:51倉敷発の始発の山陽本線に乗り込む。またしても真っ黄色の115系。いい加減飽きてきた。尻は飽きずに嬉しがっている。

f:id:sudame:20220317115713j:plain
倉敷駅:例の黄色いヤツ

糸崎駅で乗り換え。またどうせ115系なのだろうと思っていたら違う車両だった。やたらと新しい車両だなと思って調べてみると、2015年から導入されている225系という車両であるとのこと。最近、広島周辺のJR路線網は「広島シティネットワーク」と名付けられてブランディングされているらしい。確かに車両と言い駅といい案内図といいスマートである。225系は初めて乗る車両だったので乗った直後は若干嬉しかったが、中身は都内によくある近郊型車両と何も変わらないのですぐに飽きる。運良く座れたので概ね寝て過ごす。

f:id:sudame:20220317115706j:plain
糸崎駅:ちょっとかっこいい225系

西条駅でまた乗り換え。広島は比較的人口が多く、運行距離が短い列車で構成された都市圏ダイヤが組まれているため乗り換えが多くなる。西条駅では15分ほど時間があったので駅に付設されているパン屋で朝食のパンを買う。思ったよりも皮が硬いタイプのパンで、時間が無いと慌てて口に入れたら喉に突き刺さった。この文章を書いているのは三日目の18時であるが未だに喉の切り傷が痛い。この旅行最大の失敗となる。

f:id:sudame:20220317115710j:plain
三原:瀬戸内海の朝の景色、気持ちが良い

9:44に岩国駅で最後の乗り換え。時間的にも通勤時間を過ぎ、車内はガラガラになる。外の景色も徐々にローカル度を増して良い具合である。新山口駅で長時間停車するというので改札外に散歩をしに行く。駅前には何も無かったが駅舎がかなり綺麗だったのでいろいろ歩いてみる。一緒に改札を通過したお姉さんは下車後すぐに観光案内所に直行して所員から話を聞いていた。なるほど乗り継ぎの微妙な時間は観光案内所に行くという手もあるのかと感心する。

f:id:sudame:20220317115703j:plain
新山口駅:線路がたくさんあるの好き人間

下関

13時半ごろに下関駅に到着する。まず昼食を調達する。事前に調べたところ駅前の商業施設のフードコートに地元の魚問屋が店を出しているとのことだったので、下車後一目散に向かう。「当店イチオシ!」な海鮮丼を選ぶ。フードコートは地雷ではないか、きちんと街に繰り出たほうが美味い飯が食えたんじゃないか、と心配になりながら丼が届くのを待つ。丼が出てくる。普通に美味くて拍子抜けした。どう考えても下関や門司のものではないだろ、と思うような食材も乗っているが、まぁ美味ければなんでも良い。観光客を喜ばせる作戦なのかもしれないが、一緒に出てきた醤油が甘めの醤油なのも「西国に来たぞ!」感があって良かった。

f:id:sudame:20220317115635j:plain
下関:昼食の海鮮丼

せっかく下関に来たのだから、関門海峡を眺めたい。駅前のマップを見ると下関港の国際ターミナルが目に入る。ここから韓国の釜山や台湾に高速船が出ているらしい。国際ターミナルと言うからには立派な景色が見えるだろうと向かってみる。しかし船も無ければ景色も見えない。まぁ港ってそういう淡白なところがあるよね、そういうところも好きだよ、と謎の感想を抱きつつ退散する。

f:id:sudame:20220317115616j:plain
下関:バッチリ閉鎖されている下関港国際ターミナル

関門海峡をろくに眺められなかったのは残念であるが、気を取り直して街の散歩に出る。歩いてみるといろんな方角に海があり、自分がどの方角を向いて歩いているのか分からなくなる。高杉晋作奇兵隊を結成した地があるというので見に行く。銀行の横にちんまりと碑が立っていた。駅前のマップにもデカデカと紹介されていた割にはこれか、と少々落胆する。まぁ史跡ってそういう淡白なところがあるよね、そういうところも好きだよ、と謎の感想を抱きつつ退散する。

f:id:sudame:20220317115608j:plain
下関:予想よりも(いや正直少し予想していたが)小さい奇兵隊結成の地

下関 → 小倉

生まれて始めて関門海峡を通過するので、とてもワクワクしながら列車に乗り込む。車両は国鉄415系JR九州といえば車両が小綺麗なイメージがあるが、関門海峡線は国鉄車両を使い続けている。電車を動かすために使う電気はJR九州は交流、JR西日本は直流である。JR九州JR西日本にまたがって運行する関門海峡線は交直両用車を用いる必要がある。JR九州保有している交直両用車は国鉄415系のみなので、いかにJR九州が車両を小綺麗にしようと、ここはオンボロの国鉄車両を使い続けるしかないのである。

f:id:sudame:20220317115604j:plain
下関駅:オンボロ国鉄415系

楽しみにしていた関門海峡通過であるが、トンネルで外の様子が分からないこともあり、ワンダフルに味気なかった。本州と四国を結ぶ瀬戸大橋を渡るのがあれほど楽しいのに比べると何とも地味極まりない。門司駅に着き、駅名標JR九州仕様になっているのを発見してやっと九州に上陸した実感が湧いた。ほどなくして小倉駅に到着。

f:id:sudame:20220317115556j:plain
小倉駅JR九州駅名標は独特

小倉 → 博多

小倉から博多までは鹿児島本線の快速に乗る。先にも書いたが、JR九州の列車は小綺麗である。パッと見で特急列車かな?と思うような車両が普通に鈍行で使われている。内装も凝っていて、吊り革を垂らすバーの形がオシャレだったり、鈍行列車なのにゴミ箱や小物置きが設置されていたりする。車景に九州らしいものが無いかとしばらく外を眺めていたが、特に何も発見できないので諦めて寝る。

f:id:sudame:20220317115552j:plain
小倉駅:小綺麗なJR九州の車両

博多

長時間の移動で疲れ切ったので遠くまで散策に行くのは断念する。多少遠回りをしつつホテルに向かい少し休憩。福岡出身の友人に博多駅近くのラーメン屋でおすすめを教えてほしいとLINEを飛ばしたところ、「最初はGoogle検索で上位に出てくる店に行けばどこ行っても間違い無いよ」とのことなので、とりあえず博多駅ビルの「博多めん街道」に行ってみることにする。

f:id:sudame:20220317115548j:plain
博多駅:デカい

疲れたしビールを飲んでおきたいと思い、手前の居酒屋で一杯だけ引っ掛ける。博多名物の鶏皮を食べる。ビールを全身に染み渡らせたところでラーメン屋 Shin-Shin に入る。博多ラーメンの麺の固さは「カタ」「バリカタ」のどちらかを選ぶのがベーシックらしいが、僕は初めての博多ラーメンなので「普通」で注文。普通でも十分歯ごたえのある固さで、これなら僕は普通くらいでちょうど良いと思った。

f:id:sudame:20220317115536j:plain
博多:博多ラーメンには疲労回復効果がある

博多自体は東京名古屋大阪とあまり変わらないただの大都市だと分かったので、あまり深く考えずにホテルに戻る。途中のセブンイレブンで水を購入。レジで店員に「いつもありがとうございます」と耳打ちされる。博多には政府に用意された僕のクローンでもいるのだろうか。

f:id:sudame:20220317115531j:plain
博多:僕のクローンが足繁く通うセブンイレブン

ホテルではコインランドリーに洗濯物をブチ込みつつ、博多駅で追加購入した本を読む。コインランドリーの仕上がりと同時に就寝。

読んだ本

移動が長かったので2冊読めた。

ジョージ・ソーンダース(訳:岸本佐知子)「短くて恐ろしいフィルの時代」

www.books.or.jp

Twitterで誰かが「今読むべき」と言っていたので読んでみた。誰が言っていたんだっけな、と思ってTwitterをひっくり返してみると岸本佐知子本人だった。SNSみを感じる。不思議な世界の国の存亡をめぐる中編。たしかに今にドンピシャな内容だと思った。

辻泉など「メディア社会論」

www.books.or.jp

メディアと社会の関わりについて解説した入門教科書。この分野の教材は一瞬で古くなっていくが、これは2018年出版なのでギリギリ許容範囲と思う。「ネット広告の功罪」のあたりが面白かった。ところで今回のウクライナ戦争ではSNSを通したプロパガンダが東西両陣営で公然と行われている。SNS型のプロパガンダは今までのマスメディア型のプロパガンダと違う手法で行われ、効果や機能も異なるのは自明であろう。このあたりの本が出たら読んでみたいと思う。