筑波大学enPiTにKibelaを導入した話

筑波大学enPiTにKibelaを導入した話

この記事はenPiT Advent Calendar 2020の4日目の記事です。

昨日は筑波大学enPiT教員、渡辺先生の「enPiT筑波大の小ネタ:実況チャット」でした。実況チャットは楽しいです。リアル授業ではなかなか発言しづらい人が発言できたり、Slackだと誰かの発言に対して様々リアクションできたりと、何かと便利です。コロナが終わった後、コロナ禍で獲得した便利グッズを逆輸入できたら環境が成長するなぁ、などと考えております。

はじめに

enPiT Advent Calendar 2020の初日の投稿では勢い余って自己紹介を忘れたので、この場でご紹介をば。

僕は筑波大学情報科学類4年の須田という者です。ネットでもリアルでも「すだめ」と呼ばれているので、皆さんもそう呼んでください。enPiTは昨年は受講生として受講し、今年は学生メンターとして運営側に関わっています。学生メンターとしての面白さは明日同級生の日高が書いてくれると思いますのでお楽しみに。

今年はメンターとして、筑波大学enPiTに「Kibela」なるものを導入しました。本稿ではKibelaの紹介や導入の意図、導入した感想などを紹介していこうと思います。

チームで得た知見を共有したい!

enPiTはチーム開発を軸とした内容の講義です。enPiT全体での作業は1年を通して10回弱の特別講義に限られ、その他のほとんどの時間は学生5人程度で構成されるチームとして活動します。通常の講義であれば、学生が受ける感想や意見、獲得する知見にはそう大きな偏りが生まれるものではありません。線形代数の授業を受ければ行列の操作ができるようになるし、解析学の授業を受ければ微分方程式が解けるようになります。

しかしenPiTのようなチーム開発を主体とする授業では、チームごとに得られる知見や感想が大きくバラけてきます。一人一人の学生が自らのチームに特化した学びができるのはenPiTの大きな利点ですが、せっかく似たようなことをやっているチームが複数あるのにも関わらず一人の学生は一通りの道筋しか学べないのは非常にもったいないことです。

これはおそらく教員も学生メンターもうっすら思っていたことだったようで、それが故に2020年度はMiroを使ったりSlackを活発にしたりDiscordを使ったりと様々な工夫がなされました。その中の一つに、僕が導入を提案したKibelaがあります。

Kibelaとは?

Kibelaとはチーム内でドキュメントを書いて共有するためのサービスです。

kibela

日本の株式会社ビットジャーニーという会社が運営しており、Markdownでもりもりとドキュメントを書いてチーム内で共有するというwebサービスです。日本企業が開発したということもあり日本語入力が非常にスムーズな他、フォルダ分けでドキュメント整理が楽だったり拡張MarkdownでPlantUMLが描けたりと、ドキュメント共有サービスの中でもかなり使いやすいサービスだと思います。

そしてなにより、Kibela非営利団体であればスタンダードプランを無料で利用することができます。大学組織は当然非営利団体ですから、enPiTを始め様々な学校でのチーム活動にはもってこいのサービスです。

どう使ったか?

筑波大学enPiTでは春学期(この期間、学生は基礎的な技術力を付けるため各自で自主的に学習します)の途中でKibelaを導入して、積極的に活用するように呼びかけました。すると、以下のようなコンテンツが続々と投稿されました。

  • 教員・学生メンターからは

    • JavaScriptでゲームを作成するワークショップ記事連載
    • .NET Coreでwebアプリを作るワークショップ記事連載
    • 昨年の経験を活かした様々な活動の提案や呼びかけ記事
  • 受講生からは

    • 自主学習中に生じたバグの対処を投稿するフォルダ
    • 「自分のために自分がやったことを淡々とノートに残すところ」フォルダ
    • 各種様々な環境構築記事

もちろんこれ以外にも様々な記事が投稿されました。

また、集中的に開発を行う夏休みの集中講義(通称「夏合宿」)では、メンターが応じた技術的な質問とその回答をまとめておく「メンターQ&A」という記事集も作られ、大いに活用されました。

ところで、夏合宿では毎日各チームで1日の反省会が開催され、得られた感想をKeep・Problem・Tryの3つに分類していくというコーナーがあります。反省会の結果はオンライン上のホワイトボードに残るのですが、これを全部スクリーンショットに取って毎日Kibela記事としてまとめたところ、かなり評判が良かったです。分散しがちな知見を少しの手間でまとめるという方向で活用できた点も良かったところの一つだと感じます。

秋学期はそれまでよりもさらにチームの独自色が強くなることもありKibelaの活用頻度は下がりましたが、12月現在では累計81件もの記事が投稿されています。

使ってみてどうだったか?

まず受講生が各自で技術研鑽にあたる春学期で印象的だったのは、受講生が記事を書くことをモチベーションとして学習に当たれたということです。実際、Pythonのwebフレームワーク「Django」を勉強していた学生は自分の学習成果をシリーズ形式でまとめてくれましたし、「React Native + Expoでメモアプリをサンプルに沿って作成してみた」などというQiitaに投稿してもおかしくないようなボリュームの記事が受講生の手によって公開されたりもしました。

また、夏合宿で行ったメンターQ&A記事集は、分散しがちな各チームへの技術支援を一箇所にまとめられたという意味でもなかなか良い試みだったのではないかと思っています。

得られた知見としては、やはりこういったドキュメント化された知見の共有は強い推進役がいないとなかなか浸透しないということがあります。春学期から夏合宿にかけては僕もかなりの頻度で「文字化しよう!」「ドキュメントを書くのは偉い!」「僕も書くからみんな書こう!」と引っ張っていたのですが、秋学期になってからドキュメントを書く文化はかなり下火になってしまいました。どうやって組織にドキュメント共有の価値観を浸透させるかという点は課題かもしれません。

また、今思うこととしては、このKibelaを来年以降も引き続いて使うことでenPiTとしての知見が例年蓄積され数年後には何か面白いことになるのではないかと思います。筑波大学enPiT関係者にはぜひぜひKibelaを引き継いで活用していただきたいという思いでおります。

まとめ

  • ドキュメント共有サービス「Kibela」はいいぞ
  • チーム型の講義ではチーム間での知見の共有が大切だと思うぞ
  • 筑波大enPiTでKibelaを使ってみたが、かなり手応えが良かったぞ
  • ドキュメント共有を文化として定着させるには努力が必要かもしれないぞ

明日のenPiT Advent Calendar 2020は学生メンター日高の「半年間メンターをやって思うこと。」です。お楽しみに!